#1-2 Damian Hill

KIC Interview
海外から移り住んでいる方々に聞く鹿児島の話

#1 Damian Hill

前回(#1-1)に引き続き、ダミアンさんへのインタビューをお届けします。今回は、初めての鹿児島の印象、ダミアンさんから見た鹿児島の人など興味深い内容になっています。

——

2.鹿児島の印象

− 初めて鹿児島に来た時の印象は?

ダミアン:短かったので。2泊ぐらいしかなくて。正直、言葉は分かりにくいなって。電車を降りてホームに立っている駅員さんに声をかけたんですよね。普通に答えているつもりで全然わかんなかった。で、僕が言った。「あ、今おっしゃったこと、全然わからなかった。それが噂の鹿児島弁ですねえ」って。

 − 鹿児島の人柄は?

そうだね、ま、ちょっとフレンドリーだなっていう印象もあったんですよね。関西も結構フレンドリー。ストレートだし、自分が知り合ったころはフレンドリーで、「あほか」とか言うんだけど、愛情のある「あほか」なんですよね。最初は驚くけど、ちょっと慣れると「あほか」って言ってくれることが、うれしい、みたいな。

東京はみんな時間がなくて、駅でぶつかっても知らんぷりだけど、鹿児島に来たら、みんなのんびりしていて、オーストラリアと共通するところがある。オーストラリアもわりとのんびりしているから、ちょっと誰かに声をかけたら、しゃべってくれる、慌ててない。ちょっと迷子になっている感じで地図を見ながら声をかけたら必ず、答えてくれる。「大丈夫ですか」とか「おまんさあはどっからきやったとな(あなたはどこからいらしたんですか)」とかって(笑)。

今でもますます思うんだけど、いろんなところに住めば住むほどわかる。鹿児島の人は本当に、都会の人に比べると、情がある、親しみがある、親切、そういうところがあるんですよね。鹿児島はいいところがいっぱいあるし、みんながそのことをプライドに思っていることが伝わってくるんですよね。「鹿児島はよかとこじゃっど(鹿児島はいいところですよ)」っていうのが伝わってくる。「我々鹿児島人だよ。灰だけはやっせんど。(灰だけが困るけど)」
そういう印象があります。

 − 自分の暮らす場所を選ぶのに鹿児島弁を覚えたいっていう気持ちも?

それだけ興味があったんですね。京都に住んでいたとき、ま、北海道にもいたんだけど、北海道は標準語とそんなに違わないじゃないですか。特別な言葉はいくつかあるんだけど、でも、普通の会話自体はよその人が聞いたらわかるんですよね。ま、ちょっとイントネーションが違う。秋田の方もそうなんだけど、ズーズー弁になる。ちょっと集中して聞かないとわからない。日本人はそうでもないかもしれないけど。でも、計算すればなんて言ってるの理解できるようになりました。

 − 方言は計算すれば理解できる?

僕はその当時、札幌で仕事してたんだけど、社長のお父さん、ま、おじいちゃんって呼んでた人が、もともと秋田出身で最初は全然わからなかった。何を言っているのか。で、適当に「はあ、はあ」って感じだったんだけど、だんだん住んでいるうちに謎が解けてきた。計算して、例えば「す」って言ったら、それは「し」って言ってるかもしれないし、「す」かもしれない。どっちかだから、「き」が「く」に変わったり、「し」が「す」に変わったりするじゃないですか。でも、「す」はそのまま「す」だから、「うすにすわって」って言われたら、まず、ここに牛はいないな、牛はいないから、臼もないし、椅子はないから、この石のことなんだなって、いろんなパターンを考えて計算して、それが面白かったんだよね。

初めて聞いたのは、北海道に向かう夜行列車で、ある日、青森までは普通電車で、青森からは夜行列車に乗り換える予定だったんだけど、青森の手前のどこかでアナウンスが流れるんですよね。「このでんさは青森に着くのはぬずぬずぬずぬふん」って言うわけ。「ぬずぬずぬずぬふん」って。最初は「えー」って、「ぬずぬずぬずぬふん」、なるほどね。「22時22分」。でも、ちょっと計算したらわかるよね。

 − オーストラリアと比べて、日本は地域ごとのことばの違いっていうのが複雑なんですか?

オーストラリアは変わらないですよね。オーストラリアではまだ220年ぐらいしか英語使われてないし、オーストラリア人は結構移動するのが好きなんですよ。勝手っていうところもあるんだけど、例えば、実家はシドニーの近く、でも、都会は好きじゃない。田舎に移りたい。また、逆もあるんだけど、僕も田舎で育って10代のころは「この町は退屈だ、街に行きたい」って、街に行ったんだよね。で、シドニーの大学に言ったりしたんだけど。でも、逆に、例えば、シドニーで結婚して、子どもできて、子どものために田舎の方がいいね、って田舎の方に行ったりする人もいるし。大きい国だから、例えば、メルボルンの人はメルボルンの冬はいやだって、ケアンズに引っ越したり、旅したり、旅している途中で気に入るところがあったら、そこに移住したり、結構自由に動き回っていることもあるから。あと、仕事の都合でどこかに行ったりとかするから、言葉が結構混ざるんですよね。

だから、日本みたいに、例えば、鹿児島の人が東京に行って、同じ電車に乗っている人が鹿児島弁使ったら、「あ、鹿児島弁ですよね。鹿児島はどっちですか。」とかそういう話になるじゃないですか。でも、オーストラリアではシドニーの人がパースに行って、電車に乗って、「Oh, you are from Sydney.」とか、あんまり分からない。言わらないですよね。変わらない。どっちかっていうと、都会の人はちょっとあせっている。しゃべるのが早い。田舎に住んでいれば、時間の余裕もでてくるからゆっくりしゃべるよね。

でも、日本でもあると思うんですよ。例えば、農家とか。時間にあんまり気にしない人とかだったら、ゆっくりしゃべる。のんびり。時間の余裕を持っているってことだよね。それを例えば、田舎の人と都会の人がしゃべっていたら、こっちがゆっくりしゃべるからあっちがイライラしてくる。「はよ言え(早く言え)」みたいな。それはあるんだけど、地方によって時々使う言葉は変わってくるんだけど、でも、通じないことは絶対ないですよね。

 − ダミアンさん自身は移住するということに対して抵抗とかはなかったんですか。

ないですね。もうその時点ですでに日本に3年ぐらい住んでいたし、鹿児島弁ができなくても、標準語で話せたし、不自由というのはあんまりなかったですね。周りと話できないことはなかったので。鹿児島に来ても、鹿児島弁が分からなくても、「ごめん、わからないから標準語で言って」って言ったら、みんな言おうと思えば標準語使えるわけだからね。

 − 鹿児島弁も計算すれば理解できる

さっきのズーズー弁の話に戻るけど、計算すればわかるっていうのがあるんですよね。縮めるとか、形容詞の最後が「か」に変わるとか。

例えば、「暑い」じゃなくて、「暑か」って。「暑か」って言われたらわかるよね。「い」が「か」に変わっただけで、「暑い」っていうことを言っているんだよねって。「よかが」とか。だから、「よか」は「いい」って意味だと。

それは分かりやすいんだけど、逆に引掛け問題みたいなのもあって、自信過剰になって、ビールをこぼしたら「あったらしかー」って言われたんだよね。「あったらしか」って。で、「あ、新しいでしょ。このビール、新しいの」って。「違う、違ど」って、「もったいない」っていう意味。「あったらしかこつすんな(もったいないことするな)」って。

MBCラジオの番組の手伝いをさせてもらっていて、過去に『ヒリーのからいも英会話』っていうコーナーをしていたんだけど。そのからいも英会話っていうのは、スタッフと話し合って、鹿児島弁を英語になおす、標準語を通さないで、鹿児島弁をそのまま英語に直すっていうコーナーをやってて、例えば、「きゃあ、ぬきが」とか、一応、鹿児島弁が分からない人のために「今日は暑いですね」「It’s so hot today」とか。「It’s so hot today, せーの、・・・・・」って。いろいろと工夫をしながら鹿児島弁と英語を楽しむために取り組んでいました。

インターネットでまだダウンロードできますよ。『ヒリーのからいも英会話』で検索すれば。音声もまだ、ポッドキャストで、まだダウンロードできますよ。


文:フォーブス

vol.3につづきます。

#1-1 
#1-2

 

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