【開催レポート】かごしま語っ場―2017 Part1


気持ちのよい秋の夕暮れ時、今年で第4回目の開催となる「かごしま語っ場―」がスタートしました。


今年も素晴らしいゲストスピーカーの方々においでいただき、マルヤガーデンズの屋上階には穏やかな、しかし、期待に満ちた空気が流れていました。そんな空気にぴったりの司会で進行を務めたのは、サクラ島大学学長の久保雄太さん。

 


今年も鹿児島のそれぞれの場で活躍する旬のゲストをお迎えし、10分間ずつのキーノートスピーチをお願いしました。


この「かごしま語っ場―2017」 開催レポートでは、鹿児島の未来を提案するキーノートスピーチと、それに基づくグループごとのディスカッション、舌もお腹も心も大満足の第2部の交流会の様子を3回にわたってお伝えします。

 


今年の「かごしま語っ場―」のゲストスピーカーは、以下の3人の方々です。


砂田光紀さん
ヒラノマリナさん
ミッチェル・ステープルトンさん

 

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砂田光紀さんのキーノートスピーチ

 

砂田光紀さんの経歴

最初のゲストスピーカー・砂田さんは、福岡の有限会社オフィスフィールドノートの取締役。全国の博物館、公共施設、店舗、街づくりの総括プロデュース、再生プランを手がけておいでです。

鹿児島では、「薩摩藩英国留学生記念館」を総合プロデュース。オープン以来、14万人を動員する人気施設となりました。/h>

砂田さんが手がける地域の魅力発掘、磨き上げる作業、具体的なデザインや運営プランまでの幅広い提案は高い評価を得ています。


2005年刊行の著書『九州遺産 近代化遺産編101』は2015年に第8刷を増刷。


日本経済新聞「アプローチ九州」欄に記事を連載中と、幅広い活動を続けておいでです。

 

キーノートスピーチ

伝統的デイバッグ「カンザー」

 


なんだか昔見たことがあるような農具を2つ担いで登場の砂田さん。


一つ目の農具は、種子島の「カンザー」と呼ばれるものだそう。一見、肩に掛けるデイバッグのよう。農具等を入れて運ぶために使われていたそうで、川に生えているイグサの仲間である「ミチシバ」を乾燥して作られるそうです。以前は地域のどこの家庭でも使われていたのだろうと思われる、その口が細くなった自然素材のバッグは、今では作ることのできる人はほとんどいないそうです。

 

鹿児島の伝統工芸品「箕」

 


二つ目の農具は「箕 (み)」。こちらはなんだか見覚えのある形。現在でも大量の落ち葉などを集めるときに使われるプラスチック製の「てみ」と呼ばれる塵取りの一種に似ています。


砂田さんが持ってきてくださった箕は、薩摩半島の日置で1,000年も前から作られてきたものだそう。箕は、米などの穀物の籾殻や塵埃などのいらないものをふるい分けるための道具だそうです。

 

シンプルな形に凝縮された知恵

 


シンプルな形なのに箕に使われている材料は5種類。まず、持ち手の部分は粘りのある山ビワの木。これは乾かして使うと長持ちするそう。


また穀物などを入れる部分は、竹で細かく編んであるそうです。目が細かいのは、菜種、穀物の種など、とても小さい粒が間から落ちないようにするため。とても上質な竹は鹿児島でしか取れないそうで、砂田さん持参の箕にはその上質な竹が使われているそうです。そして、それらを綴っているのがカズラ。さらに、桜の皮(樺)が使われており、桜の皮の周囲に使われている細くて白い部分は藤の蔓をたたいて伸ばして細く糸よりにして編んだもの。この藤の蔓は、さらに隙間から粒が落ちないようにするための工夫なのだそうです。


こんなにシンプルに見える道具にも、5種類もの材料がまさに適材適所で使用されている。昔の人の知恵に、改めて目を瞠る思いでした。

 

2色使いのデザインと、その理由


砂田さんが持参した箕は、円形ではなく、持つ方が丸く、先の方は平らになっていて、持ちやすい仕様。この部分は奄美や琉球の箕にはないそうです。さらにこの箕は、真ん中のあたりで色が上下2色に分かれています。使用する面の上部は赤っぽい色、そして下部は白。ところが、これを裏返してみると、その色が逆になっているのです。

 


表裏で色が逆になっている理由を問いかける砂田さん。その理由は、道具として使用される際に長持ちさせるためでした。ぽんと放り投げて一番傷むのは裏側の丸みを帯びた部分。その部分に竹の表皮が使われ、表面は、穀物を入れて篩う際、穀物に混じっている小石などで傷みやすくなる部分に表皮が使われている。一見ツートンカラーでおしゃれに見えたのは、実に機能的なデザインだったのです。

 

鹿児島のオリジナリティ

 


この「箕」という道具は、日置で作られ、全国に出荷されているそうです。特に九州一円、山口県、たまに東北でも見かけることができるそうです。


鹿児島で生まれて、鹿児島で育った古代からの道具である「箕」。


「せごどん(西郷どん)も大事、篤姫も大事。でも、自分たちの暮らしの中にあるオリジナリティって、なんだろう?」と問いかける砂田さん。


今の暮らしでは、日本中が画一化され、昔から伝わってきている道具などの価値は、分かってはいるけれど使うことはない。竹ざるひとつとっても、もっともっと工夫すれば、利用価値はたくさんあるはず。


鹿児島の道具は、職人さんがどんどんいなくなり、材料が忘れ去られていく。これって、本来の日本もなくなっていくってことじゃないだろうか?


そんな砂田さんの言葉に、今さらながら、便利さの中で忘れ去られ、置き去りにされてきた昔ながらの、先人たちの知恵が凝縮された道具たちのことを思わずにはいられませんでした。

 

便利な時代の中の、伝統品の価値

 


例えば、この道具(カンザー)、実はかっこいい。紐の部分の長さ調整も可能。バッグの口が細いのにも理由があって、お弁当をバッグに入れておいても、口が細いため、カラスなどがつつかない。口の部分に鎌を差しておくと、鳥は近づかないし、動物も悪さをしない。これは古老から聞いた話として、紹介してくださった砂田さん。自然素材で作られたデイバッグは、そのまま街の風景にも馴染みそうな気がしてきます。


砂田さんは続けます。「こういったことを何かに応用できないだろうか? 日本中、同じ街並み、同じように排気ガスやほこりがたつ道路。オリジナリティを大事にしないところに、本当の豊かさはあるのだろうか?」と。


「衣食住に使う道具も、できれば手作りのものを大事に使いたいし、次の時代に受け継いでいきたい」と砂田さんは続けます。「既製品は安く楽に手に入る。でも、人の技術、民俗芸能や年寄りの話、そういうものを受け継ぎながら街を作っていかないと豊かさはない」と語る砂田さん。


「だれでもなんでも手に入る時代。クリック一つで翌日にはモノが届く時代。」カンザーを示しながら砂田さんは続けます。「こういうものを作りながら、砂田さんに話してくれた職人さんの話を、『僕は一生忘れない』」と。


「川がコンクリートになって、ミチシバが取れないから、もう作れないんだよね」

 

鹿児島の本当の豊かさと、鹿児島のフォークロア

 


また、鹿児島には数百を超える無形文化財がある。鹿児島市内だけで56もの民俗芸能が伝承されている。そういったものを、もう次の世代が受け継がなくなっている。それらを守ろうと必死で努力しているけれど、みんな忙しい。無形文化財、民俗芸能の伝承に価値を見出してもらえない。


モノだって、わざわざ手作りの伝統工芸品を買わなくても、デパートで安く手に入る。


でも、鹿児島の豊かさって、そんなもんじゃないんじゃないかなって思いながら過ごしていると、砂田さんは語ります。

 

砂田さんからのディスカッションテーマ》

 


「フォークロアという言葉が大好き」という砂田さん。


「皆さんも、鹿児島のフォークロアって、どこにあるのか、それをちょっと考えてほしい。なんでもいい。身の回りにある昔から伝えられてきた芸能でも、あるいは、伝統的な工芸品、しきたり、そこに何かの意味を見出すことができるのなら、大切にしていただきたい。


自宅、もしくは実家、おじいちゃん、おばあちゃんの家、あるいは、友だちの家にこんな道具があったら、ちょっとほこりを払って、何かに使えないかなあって、考えていただきたい。」

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さて、この記事を読んでくださっている皆様。


身の回りに、あるいは、心のどこかに鹿児島でのフォークロアを見出し、その利用方法をぜひ考えてください。そのアイディアが明日の鹿児島の豊かさにつながるかもしれません。

 

次回は、「【開催レポート】かごしま語っ場― 2017 Part1」と題し、ヒラノマリナさんのスピーチをお届けします。

 

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