【開催レポート】かごしま語っ場―2017 Part3

今年で第4回目の開催となる「かごしま語っ場―」。

マルヤガーデンズの屋上階にて、各界でご活躍の3人のゲストスピーカーの分かりやすくて、いつもとは違う視点から鹿児島を再確認できるお話を伺いました。また、それぞれのゲストスピーカーから出されるディスカッションテーマに沿って、参加者が3人から5人のグループに分かれてアイディアや意見を自由に出し合いました。

今回は、Part3として、3人目のゲストスピーカーのミッチェル・ステープルトンさんのスピーチ内容をお届けします。

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ミッチェル・ステープルトンさんのキーノートスピーチ

 

ミッチェル・ステープルトンさんの経歴

 

 

アメリカのラスベガス生まれのステープルトンさんは日系三世。アメリカで暮らすなか、日本文化と日本語に興味をもち、日本について学ばれたそうです。

 

ラスベガスのインターナショナル高校を優等生として卒業後、ネバダ大学に進学。英文学の学位を取得。大学時代は、シルク・ド・ソレイユに勤め、また、クラーク郡の学校地区で代理教師として5歳から18歳の生徒に全教科を教えていたそうです。

 

来日は2007年。JETプログラムに参加し、鹿児島県川辺町にALTとして勤務。在職中は市民のための英会話クラスも運営と、川辺町の英語教育に尽力されました。

日本の英語教育に疑問をもち、アメリカの英語教育を鹿児島の方々に提供するという目標のもとオープンしたStapleton英会話では、赤ちゃんから大人の方まで幅広い層が英語を楽しんでいます。

ステープルトンさんは、合同会社StapletonのCEOです。

Stapleton英会話のウェブページはこちら

 

キーノートスピーチ

 

英語のスピーチを映像で理解

 

参加者は、準備されたスクリーンに映し出される自作の映像で内容を理解し、ミッチェルさんは、終始英語で説明するというスタイル。

分かりやすい映像と、見やすい翻訳文のおかげで、英語を聞きながらスムーズに理解できるというのは、うれしい演出でした。

 

 

アイディアを売る

 

ある商品を売りたいと考えた時、まず、パッケージのデザインを考える。商品の画像を撮ってパッケージに載せたり、文字が読みやすくなる工夫をしたり。

さまざまな画像や言葉に彩られた鹿児島観光を商品化したパッケージは、なかなか魅力的。

そう説明するステープルトンさんの横のスクリーンには、鹿児島の観光でお馴染みの名所や旧跡でパッケージングされた箱が映し出されています。

ところが、次の画像はただの灰色の箱。「この灰色のパッケージを覚えていてください」とステープルトンさん。


エイミー・チャレンジ

さて、次にイギリス出身のエイミーがスクリーン登場します。若くて旅行好きの彼女は日本が話せません。そんな彼女に「エイミー・チャレンジ」と称して鹿児島での初日の観光チャンスをプレゼントしたというステープルトンさん。

10,000円を手渡されたエイミーのチャレンジは、鹿児島市の10の人気スポットを訪れるというもの。桜島、桜島ビジターセンター、西郷隆盛のお墓、仙巌園など、定番の観光スポットを訪れ、さつま揚げ、かるかんを買い、白熊やしゃぶしゃぶを食べる。こちらも鹿児島の定番のおみやげに食事です。楽しい一日になりそうなコース設定。

 

 

 エイミー・チャレンジ、スタート!英語の案内板は?

 

「さあ、この1日でエイミーはお金をいくら使うと思いますか?」と質問を投げかけるステープルトンさん。食事代、交通費など、参加者それぞれがエイミーが使うであろう金額を想像しているようです。

さて、画面は変わり、エイミーは鹿児島中央駅前に。まず、エイミーが選んだ行き先は西郷隆盛のお墓。でも、出だしからトラブルが。エイミーは看板が読めない。そこで、地図を調べてみるけれど、目的地は見つからない。別の地図を調べる。こちらにも西郷隆盛のお墓の情報はない。

ところで、この「エイミー・チャレンジ」では、ネット検索は使わないのがルールだそうです。なぜなら、観光客のほとんどは街中でWi-Fiにアクセスできないから、同じ条件でチャレンジしてもらうことにしたそうです。確かに、ネット検索をすれば、西郷隆盛のお墓は探しやすい。しかし、検索サイトのトップ10の記事は、鹿児島の人が書いた記事ではないそう。その言葉はショックでした。

(南洲墓地)「© K.P.V.B」

 

かくして、西郷隆盛のお墓の場所を探すべく、エイミーのチャレンジは続きます。しばらくして「観光案内所 2階」と英語で書かれた看板を発見。その看板には、「駅舎2階」と日本語で書かれているものの、英語での標記は、ただ「2階」とだけ。どこの2階かさっぱり分からない。分からないから、エイミーは間違った方角に向かい、観光案内所にはたどり着けない。そこで、思いがけず、エイミーはステープルトンさんの生徒さんだった男性に会います。その男性が正しい方角、さらに、かごしまシティビューというバスに乗ればよいという情報を与えます。そこで、アミュの前のバス停を振り返り、目にしたバス停の標記は「Great View of Sightseeing」。英語はネイティブのエイミーですが、この標記の意味は通じないようです。

 

 

 エイミーのバスでの鹿児島観光

 

さて、エイミーは無事に目的地行きのバスに乗れました。そのうえ、バスには観光ガイドが乗っている。喜んだのも束の間、ガイドは英語を話さない。

さらに、西郷隆盛の「お墓」に行きたいエイミーですが、西郷隆盛の「洞窟」の情報しか得られないまま。エイミーはしかたなく西郷隆盛のお墓に行くことを断念してしまいました。

 

 

いざ、桜島へ

 

そこで、行き先を変更して桜島へ向かうことにしたエイミー。桟橋行きのバスに乗ろうとしたところ、再び問題発生。エイミーが手にしているのは10,000円札。10,000円札ではバス代が払えないのです。次の問題は、桜島フェリーの料金支払い方法。桜島桟橋には「料金は向こう岸で支払ってください」という旨の表示があるものの、日本語のみ。何とかその表示の意味を理解しようとエイミーは努力するけれど、読めないものは読めない。ガイドに出会うも、ガイドは英語が分からず、エイミーは日本語が分からない。

日本語を話せない外国人が、中央駅から桜島に行くのに、こんなにも苦労していることを、鹿児島の観光に携わるすべての人は知っておかなければならないとつくづく思いました。

それでも、エイミーは何とか桜島にたどり着くことができました。でも、ここでも同じ問題が発生。10,000円札でバス代が支払えない。仕方がないから、ステープルトンさんがバス代を支払います。このあと、エイミーは10,000円札を崩すことができました。

到着したジオパークの案内所では、案内所の人が英語が話せ、ジオパークでは楽しむことができたようです。

 

 

桜島ビジターセンターはどこ?

 

ジオパークを後にしたエイミーは、次にビジターセンターを目指すのですが、ビジターセンターを示す標識が見つからない。そこで、ビジターセンターを探し求め歩き始めます。最初にビジターセンターだと思ってたどり着いたのはスーパーマーケット。ここでまたステープルトンさんはルールを破ることに。ステープルトンさんがエイミーをビジターセンターに案内し、ようやく桜島ビジターセンターに到着することができました。ビジターセンターの英語での情報はすばらしく、また、スタッフも英語が上手でとても助かる。また、外には英語の看板もありました。さらに、エイミーはバスで桜島の観光地を巡ることもできました。

 


(桜島周遊バス: 桜島アイランドビュー)

 

天文館で鹿児島の特産品を買おう

 

こうしてエイミーは桜島を存分に楽しみ鹿児島に戻ります。次にエイミーが挑戦したのは、天文館でさつま揚げを買うこと。でも、さつま揚げの看板は日本語のみ。英語の看板はないし、さつま揚げがどんなものかも知らないエイミーはさつま揚げを買うことを断念せざるを得ませんでした。

「かるかん」も同じでした。日本語でしか書かれていない看板は読めないし、かるかんがどんなものかも知らないエイミー。かるかんを買うことは不可能でした。

次にエイミーはお土産屋さんで知覧茶をゲットしました。ようやく、鹿児島の特産物を買うことができました。


(しゃぶしゃぶ)

今度はしゃぶしゃぶを食べるべく、エイミーは街歩きを再開します。天文館のあちらこちらをしゃぶしゃぶの看板を求め歩き回りますが、やはり日本語の看板では分からない。立ち止まって店先のメニューを読んでみても、やはり日本語だけのメニューは読めない。それでも諦めずにさらに探します。別の看板を見てみましたが、やっぱり読めない。お腹も空いたし、どこに行けばいいかも分からないエイミー。

 


(白熊)「© K.P.V.B」

そこで見つけたのが鹿児島名物の白熊でした。白熊はデザートだよね? でもお腹が空いたエイミーはとりあえず白熊を食べちゃいました。それでも、白熊ではお腹いっぱいにはならないし、お腹は空いたまま。

だから、鹿児島で有名なしゃぶしゃぶ探しを再開します。でも、やっぱりしゃぶしゃぶのお店はどんなに探しても見つけることはできません。エイミーはだんだんイライラしてきました。結局、しゃぶしゃぶを断念してお弁当を買いました。これで「エイミー・チャレンジ」は終了。

 

 

海外の観光客にとっての鹿児島のパッケージ

 

さあ、ステープルトンさんが手渡した10,000円札。エイミーはいったいいくら使ったか?

答えは3,500円でした。

鹿児島はすばらしい場所。ゴージャスな自然、活火山、おいしい食べ物、アメージングな人々・・・。

これらは、何世紀にもわたってここ鹿児島に存在しますと、ステープルトンさん。

「さあ、このすばらしい鹿児島を、海外からの観光客に紹介するパッケージの実情はこれ」

そう言ってステープルトンさんが示した画像は、あの何も描かれていない灰色の四角い箱。

エイミーさんの体験を通して見た鹿児島は、まさしく何のパッケージングもされていない、いったい何がどこにあるかさえも分からない灰色の世界でした。

 

《ステープルトンさんからのディスカッションテーマ》

鹿児島の灰色のパッケージが鮮烈に心に残った状態の参加者に、ステープルトンさんが出したディスカッションテーマは、「今の話を聞いて、自分にできることは何かを考えて」。

鹿児島のPR下手は、地元の多くの人の話題にも上るところではあるけれど、日本語を話さない、読めない人にとっては、そんなレベルではなく、観光そのものが本当に困難を極めるということ、鹿児島名物と呼ばれている食品ひとつ買うのも、日本語表記だけでは、いったいどんなものなのかさえ見当もつかないことを疑似体験した参加者たち。どのグループも活発に意見を出し合っていました。

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観光関係のセミナーに参加すると、「観光者目線で」という言葉を必ず耳にします。しかし、「観光者目線」とは一体どういったものなのかを理解しているとは思えない看板や標記、そして、外国人旅行者にとっての鹿児島市内の交通機関の在り方、ひいては、鹿児島市内から霧島、指宿などの人気スポットに行く際の不便さを思うとき、鹿児島の観光は「観光者目線」からはまだまだほど遠いと思わざるを得ないという事実を再確認させていただきました。

さあ、この事実を踏まえ、「じゃあ、私たちひとりひとりにできることは何か」を考え、できることは実行に移そうというのが「かごしま語っ場―」の主旨。

今回の3人のスピーカーの方々のスピーチが、参加者おひとりおひとりの心の中に小さな種をまき、いつか何らかの形で花開くことを願いたいと思います。

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次回は、交流会の様子をレポートいたします。

 

 

 

 

 

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